避難地域の復興と再生を進めていくためには男性だけでなく女性の参画が不可欠
ですが、避難期間の長期化により、女性が主体となって活動している地域グループ
(婦人会等)が休止や解散を余儀なくされている現状があります。
 そこで、広く地域づくりに関する活動等をしている女性を対象として、地域コミュニ
ティづくりに関する研修を行いました。
 なお、全6回のセミナー内容についての助言や、各回の進行・ファシリテート役など
を2名のコーディネーターに依頼して実施しました。
・北村 育美さん(福島大学経済経営学類「ふくしま未来 食・農教育プログラム」研究員)
・新田 真由子さん(福島大学ふくしま未来学推進室事務局 地域コーディネーター)
 ※コーディネーターの所属は依頼当時

◆内容
(1)第1回 事前学習(講演は一般公開)

   参加者:14名(ほか第1回のみ参加者12名)
   内 容:地域コミュニティづくりについての講演会を行いました。
       また、終了後に全6回参加希望者の顔合わせ(自己紹介)を行いました。     
       講演:「地域づくりに携わった学生の実践事例から~湯川村等での取組~」
       講師:岩崎 由美子さん(福島大学行政政策学類教授)
01 第1回 岩崎教授.jpg【参加者のふりかえり】
 ・かーちゃんの力プロジェクトの成功した理由の中に、震災前からの地域のネット
  ワークが築けていたからという内容があった。今からでも遅くはないので、築いて
  いくべきだと思いました。
 ・かーちゃんの力プロジェクトやあぶくまロマンチック街道の取組など身近な事例が
  あり、自分事として考える機会になりました。私たちの復興応援隊の取組も、福島
  大学(災害ボラ、学生DASH)と関わり、『関係人口』も増えていると思うのです
  が、なかなか町内に広まっていかないという課題もあります。

(2)第2回 現地視察
   参加者:10名
   内 容:被災者支援や復興のための活動をしている団体の方の話を聞き、コミュニ
       ティづくりの現状や課題を見出すため、講話及び現地視察を行いました。
       講師 ①吉田 晶子さん(富岡町社会福祉協議会郡山支所 総務係)
          ②青木 淑子さん(NPO法人富岡町3.11を語る会 代表)
04 第2回 バリケード.jpg

【参加者のふりかえり】
 ・吉田さんのお話から、『おだがいさまFM』で方言やなまりを積極的に使ったことが
  人々の癒しになっていることに感動しました。また、バラバラになってしまった
  町民をつなげてくれる電話帳と、それを見たときの町民の気持ちを考えると涙が
  出る思いです。
 ・町内視察、ただただ車で通るだけでは気がつかないこと、見えない町の歴史を感じ
   ることができ、貴重な機会でした。町の歴史、震災からの教訓を学ぶためには、
   青木さんたちのような語り人さんたちがいることの大切さを実感しました。

(3)第3回 グループワーク① 参加者:10名
(4)第4回 グループワーク② 参加者:10名
   内 容:二班に分かれて現地視察で見えてきた課題や取り組むべき内容やその
       解決方法を話し合い、その内容を吟味・検討しながらテーマを設定し、
       課題解決のためのアイディアを出し合いました。
       ①【コミュニティづくりのためのテーマとその解決のためのアイディア】
       ②【富岡町の魅力】(白い箱)
08 第4回 箱.jpg

【参加者のふりかえり】
 ・「富岡でできそうなこと」を考えていたはずが、気づいたら自分のまちや地元に
   あったらいいなってところにつながっていて、こんな面白い場所が日本中に広
   がったら楽しいだろうなと思いました。
 ・今まで考えてきたことが具体的な形になってきて、「こんなことができたら楽し
  いだろうなあ」とワクワクしました。地域の方から自分たちが聞きたいこと、知
  りたいことをうまく引き出すにはという点が考えさせられました。
 ・自分たちが出したアイディアに対して、住民の皆さんがどのような反応をするか
  楽しみです。

(5)第5回 模擬実践
   参加者:8名
   内 容:富岡町社会福祉協議会主催「福祉まつり」に出展し、これまでの研修
       成果の展示と来場者へのヒアリングや意見交換などを行いました。
       来場者へのヒアリングする項目は各班(A・B)の参加メンバーで協
       議して決定し、センター展示ブースへの来場者のほかに、他のブース
         に出張して活発な意見交換を行いました。
11 第5回 出張ヒアリング.jpg

【参加者のふりかえり】
 ・震災からの時間の経過と共に課題であったことが"当たり前"、"しょうがないこと"
  としてそのままになってしまっていることが多いと感じた。
 ・普通の生活に戻ったかのように感じますが、やはり「普通」ではないことがたく
  さん目に見えないところにあるんだなとも感じました。もっと交流を深めて、
  みんながもっと深いところまでコミュニティづくりに関わることができればいい
  なと思います。
 ・いろいろなお話を聞きましたが、最終的に「楽しかった」と思え、笑顔が多くて
  良かったです。(私が一番楽しんでいました。)
 ・引き続き、町民一人一人の声を丁寧に聞いていくことを大切にしていきたいです。

(6)第6回 成果発表
  参加者:7名
  内 容:これまでの成果発表や振り返りを、各班と個人で行いました。
      第2回の現地視察でお世話になった吉田さん、青木さんをコメンテーター
      としてお迎えして、アドバイスなどをいただきました。
13 第6回 班での発表.jpg【参加者のふりかえり】
 ・「商店街に何もないから可能性が広がるじゃない!」との青木先生の言葉が忘れ
  られません。
 ・"コミュニティ"と一言で表現しても、その土地その地域に住む人たちが違うように、
  コミュニティの形も違って当たり前なのだと気がつきました。
 ・コミュニティの第一歩を考えながら今後の活動に活かしたいです。

◆事業の成果と今後に向けて
 コーディネーターのアドバイスにより、富岡町をフィールドとして現地視察や展示を
実施し、私たちが考えたことをダイレクトに避難地域の皆さんや支援者の皆さんに伝え
ることができ、より実践的な取り組みにつながる研修だったと思います。
 とりわけ、第5回の富岡町社会福祉協議会「福祉まつり」(震災後再開2年目)に
おけるヒアリングでは、避難先での生活を続けるか、帰還をして生活をするかなど様々
な思いに揺れ動く住民の皆さんの悩みに直接触れる機会を得て、コミュニティづくりの
難しさを痛感したことも大きな経験になったと思われます。
 第6回の成果発表では、コメンテーターから、コミュニティづくりは地域住民や支援
団体、行政が相互に関わって「つくる」もの等のアドバイスをいただきました。今後も
参加された皆さんのより一層の活躍を期待しています。また、当センターとしても引き
続き多くの皆さんと連携協力して福島の復興に取り組んでいきます。